チポチつきですが、旧い文学の領内では全く背中一重なのが実際ね。大いに慎まなければならないことだ、と云われたのが、わかるようです。簡明なる美は非常な洞察、深い内省による選択、其に耐える精神の奥ゆきを求めます。官能において簡明な美が、つまりはそういう精神に立っているように。
わたしはこの頃こんなことを屡※[#二の字点、1−2−22]感じます。少年から青年に亙る時期にいろいろの体技、スポーツを身につけるということは、大したものであると。進退についての、おのずからな自信、それによる自由さいかばかりでしょう。精神や性格に加わる一つの現実の可能です。性格とそういうスポーツは結びついたところがあると云うことも出来るけれど。運動神経の敏さと明敏とは切りはなせないものですから。
太郎がスキーをはじめました。其には自転車をのりまわしていてスピードに恐怖しないこと、バランスの馴れ、などで上達著しい由です。瞬間の処置に動じない男らしさは、一つの美です、私などにとって大きい美しさです。太郎がどんな性格と人間的規模をもつ男になるか、そのような身についた力が、人間生活の仕合わせ、よろこびを与えるものと迄なるかど
前へ
次へ
全357ページ中31ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング