のおみやげね、わたしの休めたことの次には。
きょう位工合よくここの空気がきけば、明日明後日とよほど休めるでしょう。そして、その下地をなくさないうちに、成城ですこし丈夫さをためこもうと思います。かえる迄にはもう一度かくでしょう。暑いけれど、ここはカラリとして凌ぎようございます。
どうぞお大切に。一人でこの空気を、と思うと。だからいやよ、ね。
八月十二日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 福島県郡山市開成山より(郡山市街全景の写真絵はがき)〕
こういう風な街の上に、朝からブンブンです。どこへ行っても、ね。
荷風はラジオを逃げて引越ししたそうですが、雲のみの空ぞ恋しき安積山。よ。安積山は万葉にも出て居ります、その山が、こうして書いている茶の間の北手に見えます。今はボーとしていますが。汗と埃と心労でかたまった面《メン》が一重顔からはがれて、生地が出て来たようです。
八月十三日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 福島県郡山市開成山より(封書)〕
八月十三日
きょうは、こちらの盆の入りです。田舎のお盆ということをすっかり忘れて、急だったので土産ももたずに来て、ハア、百合子さん来なすったけエで、些か
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