れるらしいのです。それが又一風変っていて、よさそうなこと丈並べましょうか、先ずわたしの駑馬的事務能力に欠くべからざる電話があります。主人が居りません。主人は女のひとで物もちの令嬢の由、五泉《ゴセン》と申す人。大連で実父が没し、そちらへ行って三年帰らず。留守を、おうた、という女が(四十位)して居ります。おうたはそれ以前日暮里夫人のところにいてこちらをよく知って居り、いらっしゃるお客様方の中では一番好きでございますわ、という人。主人は留守番費を出していますがやり切れないので諒解の上、おうたの選択で人をおくことにしました、その話は二三ヵ月前にききましたが、わたしの気分がグラグラでしたからそのままにしていたところ、この間のお手紙やお目にかかったときのことで、やはり郊外で暮した方がよいときめ、其ならと、おうたのところきき合わせたら、マアどういたしましょう二日前に若い女の姉妹が来てしまって。よくない部屋なら、というのです。わたしは、却って二人の若い女の勤め人たちがいる方が気が楽です。おうたという人は稼ぎもので自主的に動いてはいるけれ共、さし向いでは、経済能力の関係上重荷です。他に二人いて、その人も
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