しました。二十八日に、トラックが来るというので二十七日に男雇って荒準備しましたが、二十八日は遂に来ず。今のトラックなんて、来るのが奇蹟故、つまり[#「つまり」に傍点]来るならいいがと大気をもみよ。国は電報をよこして、トラックキタカ、イツクルカ、ヘン、というわけです。次のイツクルカは、わたしのことなの。申していたでしょう? もしかしたら月末から一寸行こうなんて。そのことなのよ。トラックは三十一日に来るということになったし寿一人のこして行くなんて不可能ですし、クマさんが大した成長ぶりで食慾のかたまりみたいに一日わたしを煽ります。何にいたしましょう、何にいたしましょう。
 三十一日には其でも奇蹟が実現して、トラックが来ました。十時すぎ。それからすっかり積んで、十二時迄出発。寿一時何分かの汽車にのって、あっちで荷物うけとるの、それは考えても気の毒です。何しろ寿の荷物と云ったら、大きい一身上のうえにピアノだ机だ、ワードローブだと、男が三人でもやっとこのもの(ピアノ)などだから実に大したことでした。木戸をこわして運び出して行ってしまったのを、あとから直させたり。
 寿の荷物のあったのは食堂の向いの
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