つも、何によらず入手困難の結果でしょう。もう大体世間にそんなものはない、という時なのよ。すべてがそうよ。草履というもの、男の草履、麻うら[#「麻うら」に傍点]という風なものは、既に辞典ものです。カステーラとともに。たまにあるのは、ひどい、すぐ緒の切れる代用品です、それも参考のためよいかもしれないけれど、お気の毒です。わたしが、そちら用に買ってもっているのはどうでしょうね。緒に一本細い赤が入っているが。さもなければ昔、あなたが足をお挫きになったとき一寸はいていらしたのは? ああいうのは、本当の草履は、勿体ないかしら? 素足でじき黒くなってしまうしね。又キョロキョロして歩いて見ましょう。犬も歩けば、かもしれないから。女の下駄というものもないのよ。田舎にたのんでもないものとなりました。名将言行録はもう、腸の本と一緒にお送りいたしました。風に散りぬ、は手に入ったらお送りいたしましょう。怒りの葡萄下巻も、もしかしたらあるのよ。たのしみです。借りものですが。
 隆ちゃんからのたよりよかったことね。あの言い表しかた「天地の回転は」というの、よく兄さんに似たところがあります。何というか、その回転の大き
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