いるから、なおのこと空気が調和していて。
 ふとん類についてわたしがどんなにクヨクヨ思いなやんでいるかお察しがつくでしょうか。只今世間に綿はないのよ。ふとん側の布地も買えません。今のを大切に使うので、それはいいが、どこへないないちゃんちゃん、としておいたら、無事に秋あなたをくるむことが出来るのかと、それについての思案でとつおいつです。何しろ八月と九月殆ど一杯という時間にはさまっていて、それは只ものでない時間ですもの。縫うことは早くしておかなければだめよ。だってクマさん、ちょいと自信ありげに口を尖らして、ああやって鋏鳴らしているのも、つまりは天から降って来るのが雹どまりのうちですからね。熱いこわいものが一度落ちたら、さっさとトランクもって桐生へかえってしまうでしょう。ですから早く縫う必要があるのよ。そして出来たらどこにおきましょうね。せめて鷺の宮? ここは駄目よ。都外へ出しては、輸送が全く大したことになってしまうでしょうしね。開成山へ送ろうかと思って居りましたがどうかしら。御考えおしらせ下さい。
 それから草履の件。何となく笑ってしまいました。だって。そちらへ送ってよい、という場合は、い
前へ 次へ
全357ページ中189ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング