いる人に一室でもかしたがります。工場へつとめていて、カンづめをもって来るとか、布地が来るとか。ね。気風わかるでしょう? そういう慾ぬきで、わたしと一緒に暮してよいと思うひとのところへは、ほかの事情で暮せないのよ。笑えぬ滑稽ですね。だからわたしはいや応なし姉さんとしてくっついていなければ不便です。永続的持久法として。国が九月にはすっかり事務所を閉じて開成山へ行くと申して居ます。こっち誰か留守番を置いて。わたしはその人たちと暮すようになるのでしょうか、それとも開成山に行って、そこからこっちへ十日に一度ずつも出て来るようになるのでしょうか。今のところ自分で見当がつきません。そういう目安を自分で見つける為にも、今のうち一寸行って見るのはいいと思います。七月三十日か三十一日に立つつもりで居りましたら、何だか急に二十五日にでもなりそうよ。それというのは、寿が荷物をとりまとめのために、二十五日からトラックの来る二十八日迄ここの家にいて働きます。それはそうでしょう。国は、一つ家にどうやっていられるか分らない由、いやで。声をきき、顔を見、働く気配が。咲は、予定では二十六日にかえる筈でした。咲に云うのよ。
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