わ。シーザーは、いろんな占いをやって、おっしゃるように勇邁に其を解釈したのでしょうが、そういう占は見えなかったのかしら。シーザーなんかについて余り存じませず、しかしこれ丈は記憶にのこっています。シーザーは細君をいましめて、「シーザーの妻は、あらゆるときにシーザーの妻として振舞わなければならない」と申しました由。これは当時横行したワイロについて、それを受領するな、ということだったのよ。プルタークはかいて居りませんか? ナポレオンは気の毒な良人で、ジョセフィーヌには、えらい思いさせられつづけたのですって。例のフーシェね、ああいう奴やナポレオンの弟の不平組と徒党をくんで、偉大な人の苦痛や面目の傷けられることばかりやったのですって。人間の心の中に、そういう試みる悪意があるのね。神を試みる勿れ、とは苦労人の言葉です。ユダだって、人類的恥辱の裡にありますが、裏切りが面白いより、ひっくりかえしてみて、猶イエスは本当に死なない命をもっているのか、それを見たかった悪魔ね。近代人が、フーシェはじめポベドノスツェフの流の破廉恥を常習とするのは、いくらか違って、悲劇とすれば、アーサー王伝説中のゴネリアの物語み
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