す、もう七月とは、と。今年の早さは、早さというよりも遽しさであると思われます。時の迅さに、人間の足幅が追いつかず、工合わるくエスカレーターに乗りでもしたように、とかく重心がのこって、足をさらわれ勝の生活ね。去年の七月初旬は、まだやっとのろのろ歩き、妙な出勤をやっていて疲労し切って居りました。ことしは、其でもこうやってモンペはいて、警報の準備もし、にしん[#「にしん」に傍点]を煮ている間に手紙もかきます。
おなか、いかがでしょうか。なかなかどこでも困ります。今鳩ぽっぽと共同食料のように豆入り飯ですが、こまるのは、消化がよくないという外に、くされやすく、今のように一晩経なければならないと、涼しくしておいても「ひる」はピンチになってしまいます。堅固なパンでも欲しいことね、近代武器に対処するにふさわしいような。呉々お大事に。シャボン、使いかけですが御免なさい。唯一の貴重品でした。夏のあつさ考え、なしでおすましになることはよくないと思って居りました。これからも仰云って下さい。何とかします。あなたを、丈夫な大事ないい布地と思いなして、浴用がなければ洗濯シャボンさし上げましょう。まなじっかの化粧用
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