うのよ。あすこは一人ですから。うちの半分ね。うちは四分の一の小さい半分貰います。芸術の神様たちの養分としてはいかがかと思われますね。
 今このテーブルから見えるところに、あなたのドテラ二枚ふらふらと日向ぼっこして居ります、余りよごれず、来年使える程度なのは本当にありがとう。これを虫よけ入れて、開成山へ送っておきましょう、覚えていらして下さい。ドテラ二枚とも、よ。きのう洗った足袋もフラフラして居ます。
 この間、歯医者の帰りに、ガンサーの『アジアの内幕』を見つけよみはじめました。あなたはヨーロッパの方を、およみになりましたっけか。考えかたや観察の深さよりもインフォーメーションが面白いのね。荒木大将邸の虎の皮や鶴亀の長寿のシムボルが西欧の目にどんなに映るかなどというところも、日本人として面白く且つ参考になります。
 支那の部は大分面白うございます。東洋、日本が、どんなに分りにくいかというのは、この本を見てわかるし、例えば(三井)の祖先しらべの中に、藤原の出で、道長という青年貴族[#「道長という青年貴族」に傍点]が藤原をきらって宮廷生活を去り出生した村の名三井をとって姓とした、多分[#「多分
前へ 次へ
全357ページ中143ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング