ける人、モンペはける人に。結城素明というような七十歳も越したような先生や小倉末先生(ピアノ)のような大先輩は引こみました。国宝はこの際すべて引こめて、しまっておくというわけでしょう。博物館でやったように。
 アラ、八百やだって。一寸待って頂戴。帯をしめ直さなくては、ね。布をかぶり、筒袖を着、縞木綿の前かけしめ、カゴ下げて出かけます。
 犬が母娘でついて来て、どうでしょう、気のつよい雌犬が八百屋に出現して、ムキになってチンの首ったまにかぶりつきました。小さいくせに。女の人ばかりだからアレアレなのよ。エイ、と思って、その犬の頸輪つかんでギューギュー引っぱったら喉がキュークツになってはなしました。チンたらキャベジ籠の間にはさまってぶるぶるふるえているの。可笑しいのは、雄犬だと、大きくってもいじめたりしないし、チンも「わたし女よ」という風でつんとしていて、何と滑稽でしょう。腰がぬけかけみたいになって、一寸だいてやりました。犬抱くなんて、私の大きらいなことです。でも可愛がっているのね結局。だくのだもの、腰がぬけると。
 この八百やへは高村光太郎先生もザルを下げて来ます、八分の一ほどのキャベジを貰
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