に、スペインにもそういう感じの人々が十分どっさりいないために、文化のそういう無力さのために、あの国の悲劇はくりかえされるのですね。
この小冊子が面白いもう一つは、スペインのジェスイット派(ロヨラの派)が、どんな暗い情熱で専横を極めたかということ、一般にキリスト教が、スペインではスペインを興隆させず第三流国に堕すに活溌な作用を与えた点です。信長の時代日本に渡来したジェスイットは、西欧の宗教改革によって失った地盤を求めるためと、黄金探求の慾望と二つから来たのですが、スペインのキリスト教は、スペインがムーア人に支配され、それを奪いかえすために一役買ったキリスト教徒のおかげで、僧院だらけ、坊主政治おそろしい始末になって、今日の貧乏と無智と当途ない情熱のために、短刀さわぎをおこす情熱的[#「情熱的」に傍点]民族となってしまったのであったのね。
わたしはふるくから日本における切支丹文化に興味をもち、芥川の「きりしとほろ」とはちがったものを直覚していたのですが、当がなくて来ました。この小冊子は何かどっさりのヒントを与えるようです。キリシタン文化については、いつも新村出や幸田成友や、考証家歴史家さ
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