ったわけで、いろいろこまかいことで、可哀そうだと思うし、大局的に寿はそれで世間並のことを覚え、生活力も身につけるのです。よく変れる側が、人間学から云って大いなる利益を蒙って居ります。
 この間うち、『スペイン文化史概観』という仏人のかいた(一九三七)ものですが、よんでいて、昨夜[#「昨夜」は底本では「作夜」]よみ終り、いろいろ深く感じました。これはスペインの一九三五年までの新しい希望とその実現の時代に及び、一九三五年以降の混乱によって再びその美しい向上の試みがこわされる頃までを、統一(中世の終)から書いたものです。小冊子で、不充分だけれ共、わたし達が所謂スペイン風として異国趣味で誇張して珍しがっているすべてが、スペインにとっては誇よりは寧ろ悲劇であるということを知って慙愧を感じます。日本について、大部分の外国人の評価が、赤面ものであるように、スペインにとって、世界の人々がもつ興味の角度は、心ある精神に、名状出来ない思いを抱かせるでしょう。しかし、日本文学の代表を、いつも万葉と源氏において、恥しさを感じない人があるように、レオナルドを今日もあげるしかない貧弱さを感じるイタリー人が少いよう
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