らわれる特色です。これはこの前私がバルザックについて素描的勉強をしたときには分らなかった点で、同時に十九世紀文学とのちがい、スタンダールとのちがいを示すものだと思います。バルザックの小説では状況シチュエーションが性格をめざめさせ動かし、後の人々の作品は、其ほど社会に強烈なシチュエーションがかくれて、性格がものを云い、自己廻転をはじめ、大戦前後の自己分裂に来ています。バルザックが歴史小説から現代小説に入って行ったのも面白いし、ドイツの小説の道と並べたら更に面白いでしょう。私はまだドイツ小説は貧弱にしか知りません。漠然と、ウェルテルとリュシアン(幻滅)の二人の主人公の歩きかたの相違を文学的本質に通じるものとして感じますが。追々こういうようにしてすこししっかり世界文学をものにしてゆきたいものです。それにしては私の語学が全く何の足しにもなりませんが。語学の力にたよらずに、外国文学も或程度正しく本質を理解したいと思えば、しなければならない勉強というものは分っているわけで、私は自分の読書力が、もっと四通八達であったら、どんなに楽だと思うでしょう。これは教育がよくなかったのよ、私が余り体育のことに無
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