たちなのね、誰にしろそうですが。仔犬めいて夕飯すますと眠たくなったりするのも暫くはいいのかもしれません。又々丸みを帯びはじめ、自分で自分の体の愛嬌を感じるとうれしいわ。何となしぱっちりしなくてグタグタしているのは腕一本眺めても感服いたしません。ころころでも閉口ですが。現今の生活で、そうなりっこありません。丸く短き腕をふり、というのが関の山でしょう。
 御飯後には、小包すこし拵えるのですが、どの位やれるでしょうね、そういえば今夜の御飯のおかずは何にしましょうね。ああ、おなかが鳴って来た、では御飯、おそい昼めしとなりました。
 御飯すまして一寸台所始末したら、もうあとは一時間ほどしか自分の時間がなくなりました。
 ひどい音がして飛行機がとびます。出てみたら美しい形で雁行して居ります。低いところに雲があるので、見えつかくれつしながら。形の静かな優美さも、こんなに空気をかきさいて動いてゆくのね。昔の歌人は、人間の営みのいとまなさを、やすむ間もなき鴨の水かきとよみました。悠々浮いているようでも、と。
 今台所用本は、ナポレオンの母の伝記です。レテッツィアというひと。いつか書きましたろう? 一種の
前へ 次へ
全357ページ中127ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング