五月十六日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕
五月十六日
今、午後一時半。この食堂いっぱいに青葉照りとでもいうような、すこし眩しい光線がさし込んで居ります。お話したように、きょうは月番の第一日ですし、米の配給日で、何しろこれはもう一粒もなくなっていたところですから、謹んで内玄関をあけて、居ますヨと表示して待って居りました。来て、九キロ(半月分)おいてゆきました。三円八銭也。
昨夜は国、横浜の友達のところに泊ったので、わたしは九時半ごろ床に入り、のんびりしていたらいつか眠りかけ、びっくりして雨戸しめて本当に寝て、今朝起きたのは九時。十分眠りました。そのわけなのよ。きのう、あれから家へついたのが六時すぎでした。御飯がきれていて、それから炊いたから食べたのは八時すぎ。大ペコのペコでね。たべたら眠くなった、という犬ころの如き天真爛漫ぶりです。
きょうは、咲や国のふとんを日に干しに出して、犬ころにサービスして遊びました。茶と黒のコロコロ二匹だったのに、どうしたのでしょうか、黒しかいないのよ、きのうから。一匹のこったというのでしょうか。シートンが大層役に立ってね、その仔犬と近
前へ
次へ
全357ページ中124ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング