の色よりすこし水色っぽい更紗の布で頭包んで、とにかく小さいシャベルふるって土も掬って居るのですもの、えらい進歩であり、生きる力は大したものだと思います。そう思うにつれ、こうして自分が生き、癒りして来た力はどこから湧いているかと考えざるを得ません、わが命の源《みなもと》は、と、おどろきを新たにいたします、アダムの肋《あばら》から生れたなんて、西洋人も想像力が足りないことね。リルケは、それを疑問の詩をかいて居ります。もし肋なら、こんなに生きて、こんなにあつくて、こんなに欲ばりの生きてとなったイヴをもう二度と横はらへしまってやることなんか出来ず、あわれイヴは、のたれ死によ、ね。横はらを枕にさせてやれるのが精々で。命の源は、一つのいのちのその中に、まるっこで在るのです。だから大変よ。どうちぎることも、便利なようにちょん切ることも出来っこありません。
 もう十一時よ。寿どうしたのでしょう、あの、うらぶれ部屋で工合でもわるくしているのじゃないかしら。
 ワンワン吠えるのでガラスのところから見たら白いブラウスが見えました、まあよかった、待人来るです。
 久しぶりでゆっくりおひるを食べさせて、今そこの
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