椅子で本よんでいます。過労で弱ったのですって。注射していい由。このひとも、東京千葉と、落付かないために、過労にもなるのね、台所で私の動きぶりを見て、びっくりしていました、大した上達だって。けれども、これで又仕事したくなると、例のお笑いになるおったて腰で、旋風的になって来るのです。
 きょうはこれから姉と妹とで、ちょいとした罪悪を犯します、寿が自分用というひとかたならぬ砂糖をもち出して、コトコト煮るものをやって、私にふるまってくれるのですって。御免なさいね。二人遊びの日だから、わたしだけ袂でかくして、あなたに知らせ申さないということが出来ないの。おまけに、私の着ているセルは、筒袖でしかもゴムでくくれて、ニュッと腕が出ているのですもの。
 そんなことをしているうちに夕方になり、夕飯をしてやって寿の里帰り(やぶ入り日)も終りとなるわけです。
 私は、小使帳の整理や日記やあるのよ。二階のテスリに干しておいたネマキが風で落ちているのを見つけましたし。
 きょうはすっかり夏になりました、室内で七十八度あります、あしたあたり又グッと冷えるのでしょうか。
 大観音よこの交番のところを入って動坂の通りへ
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