のしく暮す丈仕事しておかなくてはならないと思います。そして、仕事する生活のためには、こういうのはいけません、却って一人がいいわ。朝おきぬけから、おつき合い[#「おつき合い」に傍点]してはじまるのでは仕事は出来ません。生活のいろいろの形、いろいろの調子を、経験するというのは、大したことね、それは人間しかしないことです、それが自主の判断によってされるのは。
 国は、ああいう人ですから、こうやってやってみて、調子がいいと、それをこちらにかまわずひっぱろうとする傾でね。国府津へ私を行かそうとして力説しますが、其は駄目。何のために私はあすこで暮す必要があるでしょう。汽車の切符は申告、途中二時間半往復、では一日仕事、こっちに泊るところもなくて、どうしてやれるでしょう。もし国が行くなら(経済上の理由、都民税が大したもので、従って公債その他瞠目的です)わたしは蔵前の六畳、四半へだって籠城いたします、そして一人で犬の仔なんかとやるわ、そして仕事して。それも亦たのしいでしょうと思います、こういう暮しが始ってから却って生活は自分のものとなり、のどかさも生じ、どんな小さい形でも不便中の便を見出してやれるように
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