ら、親子二番目の子――熊《クマ》・クリで遊んで居ります、クリは雄らしく、珍しいこと。チンは女権拡張で女ばかり生んでいましたが。クリを寿つれて行くのかしら。
 きょうの宿題はすんだから、予定通り穴のあいたスリ鉢に、つる菜もまきましたから、あとは本よみでいいのよ。あ、まだ一つある。二階の大掃除。これは、疲れるから夕方にしましょう、ねえ。かまやしないわ、わたしたちはここにいて、楓の若葉眺めているのですもの、ここもテーブルの上は紙や帳面やでかなりの有様ではありますが、こういうちらかりには性格があり、生活が現れていて、却って落付けるようなものです。
 こういう暮しをしてみて、段々わかり、この先、もし国が引こして、わたし一人ここのどこかの隅で暮すようになったとして、十分やって行ける自信がつきました。仕事が期限つきである生活の心持と、そうでないとは、こうも違うものでしょうか。その点わたしは例外の生活習慣をもって十八歳から暮して来たのであったと思います。
 一層生活をたのしみます、この調子で見ると、私はもう少し経ったら、本気で仕事はじめて、こういう紙の上だけでない二人遊びの時を十分に、十分にしんからた
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