、どうして、とかく初めじぶくるのか、可笑しなわたし。
あの写真はやはり役に立ちます。こんなことが一例で。普通、風呂のとき洗いもの一緒にやるのよ、家庭では。わたしは、それが疲れすぎて、いつも二つ洗うつもりが一つか、一つも出来ないのです。あれをみればそれがあたり前ね。ですから、わたしは風呂と洗濯とは別にするのが自然なのです。二日にわけた仕事として。そうすればちゃんとどちらもやれるのだわ。そういう自分としてのやり方が分って来るのも、働き馴れとともにああいうものが参考になります。わたしはよっぽどありがたく思っているのよ、べしべしづくしの成果に対して。謂わば、わたしの一生を救ったようなものです。
五月七日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕
五月七日
きょうもいい天気になりました。今、もうすこし暑くなりかけましたが、種蒔き終ったところ。例の楓のつまみな[#「つまみな」に傍点]のところを耕し直して、少し日かげだから韮の黒い種をまきました、それからおとなりとの境のところへ、ヒマを少々、あれは大きくなるのでしょう?
一休みしていたらキューキュー仔犬の声がするので、北側あけてみた
前へ
次へ
全357ページ中112ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング