なにつらく淋しく、従って回復も遅れたことでしょう。その点ではお産も結構です。泰子のひきつけは御免ですが。若し始まったら、今度はまさかピクニックもないでしょうし、空襲とかち合ったら、私がビタカンフル位|注《さ》して置いて先生を呼びましょう。
 ながくかかる回復の途上には、日常生活の動きが本当に大切です。「母の肖像」の例をひいていらっしゃるように。うちにびっくりする程人手がなくて、少し何かあると私の居るところの掃除は出来ない程ですが、その為に無理もあるけれど、体の調子によって細々と何かして気も紛れるし、体の力もつきます。私はそうして段々治って行く質ですが、寿江子は何だか調子が違ってそういうことはやれないのね。子供の時からの生活の調子が全然違っているからでしょう。それにああいう慢性の神経の弱る病気は、意志の力が実に弱くてだるさもはたにはわからないらしい程のようです。今居ないので留守居には困るようだが、家中の気分が単純化していて結局は休まります。
 私にヒステリー気味がないことをほめて下すって有難う。でもこれはどうもうちのなかでは証人をたてなければ額面通りには受取ってくれそうもありません。まだ
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