情です。昔の人はそこで短冊を出しかけたのだけれど、家では中耳炎になった泰子の泣声がひびいて、看病にヘバリ果てた身重のあーちゃんが次の間で横になっている次第です。人手が極端にないから、こういう突発のことは総動員になってしまいます。泰子は大して悪いのではないから御安心下さい。私だけが家中で泰子を抱かないただ一人の人間です。眼のことは来る十七日の夜、二人のお医者様が落ち合って、先ず乱視の度を調べたり、他の障害があるかどうかを調べたりして下さる予定になって居ります。私は大分用心して、本を読んでもらうことも手紙を口述することも止めて、一週間程過し熟睡するようになりました。マッサージもきいているようです。残暑の長さと凌ぎ難さがしみじみですが、お障りないでしょうか。私がおしゃべりをするとお思いになって、そちらも手紙を下さらないのかしら。歩けるのは(外出)余程先のことだから、どうぞお手紙下さい。薬は色々のがいるものです。友子さんから手紙で九月中には隆治さんが帰る由です。無事に島田の家の土間に立つ姿を考えると涙が浮ぶようですね。お母さんのお喜びどんなでしょう。会いに行けませんから残念です。あの人の胸の中
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