なかなかです。しかし眼のためだけ考えても、私は度胸をすえて、この疲れを休めなければなりません。今日中には看護婦が来るそうだから、赤ん坊の方だけは一かたつくでしょう。この頃はどこもかしこも修羅場で、多賀ちゃんの手紙に「静かな陽なたでゆっくり静養していらっしゃるでしょう」とあって、大笑いになりました。こうして悪い条件に速力を鈍らされながら荷物をひっ張るようにいくらかずつよくなってゆくのが実際なのでしょう。人手が揃って静かに陽なたぼっこが出来るような全体の世の中なら、言ってみれば私も半盲になるような途方もないことはあり得ないわけで、一事が万事ね。しかしあんまり閉口だから、二月にでもなったら、伊豆の伊東に安い宿屋を聞いたから(ペンさん曰く、「来年になったら上っちゃいそうだ」とのこと)ゆっくり温泉に入りに出かけたいと思います。私の心配するのは眼のことだけよ。こういう風にのそのそしている内に、視神経が萎縮を起したら大変だと思います。もしかしたら年内にもう一遍眼底をみてもらうかも知れません。本は本屋から着きましたろうか。
 毛布のことわかりました。毛布とどてらと一緒にお送りしたいものだと思っています
前へ 次へ
全137ページ中128ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング