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もうあれから一年たち、今年が二十日ばかりで終るとは何ということでしょう。だれしもこの一年はゆっくり息をつく間がなかったでしょうが。
今日から配給のお米は、とうもろこし入りになり、まるでいり卵をかけてかき交ぜた御飯のようで、玉子をたべることは少いから、玉子好きの私達は錯覚をおこして、おいしいものをみたような気が一寸します。そして味も案外苦にならず、人間の食べるものの範囲の広さを考えさせられます。
読んでもらっているカロッサの小説が、もう少しで終りです。いろいろと面白く、感じたことも多くありますから、それはいずれお正月に。ああ、でもお正月と言っても二十日前後にそちらへの手紙は出さなければならないから大変だわ。それまでにこの眼がもう一寸安定しなくてはね。
てっちゃんがこの間あなたの御意見を伺う前、もしいいとおっしゃったらと思って、前もって都合を聞いたらば、心よく引き受けてくれて嬉しゅう御座いました。あなたのお考えを聞いてから、はっきりしたことはきめることにしてあったから、つまり中止になりましたが、それでも忙しい中を躊躇せず行ってもよいと言ってくれたのは、いつに変らぬあの人の気持の
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