いう家庭のアダナがついた。
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十一月二十日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(代筆 杉本健吉筆「博物館中央」の絵はがき)〕
この絵葉書をみたら、昔ここ(奈良)へ来た時のことを思い出し、空気のかわいたカランとした感じがとらえられていると思いました。
今日セルとメリンス襦袢がつきました。庭の青桐や紅葉が黄葉の最中で中々きれいです。去年の秋はこんなにゆっくり秋色をながめる心のいとまがなかったけれども、今年は東の窓や西の窓をあけ、さては北側の動坂方面を眺めたりして、動坂の家に屋根をおおうて欅の木があったことをも思い出します。夜中に落葉の音が聞えます。輝チャンに送る毛糸が殆んど揃って、近日中に送れます。私が火鉢で湯のししてなかなかいい毛糸です。十一月二十日
十一月二十二日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(代筆 封書)〕
十一月二十二日
今日の日曜は珍らしく穏やかな秋の小春日和です。昨夜も夕方、月ののぼる頃は東空の眺めがなかなか趣きありました。二日続きであしたも休みだから、国男さんは大変のんびりして太郎も大喜びです。昨夜は新しく買ったベートーヴェン
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