南江堂はそちらへ直かに送ります。
 世界地図のことは遅れていますが、この頃は内地ののみならず学校なりなんなりの証明がなければ買えないことになっているらしくて珍らしいことです。何とかして買う様にしましょう。尚また手間取りますが、(新しいのが間に合わないこともあるでしょう)紙屋の松屋の表に紙がぶら下っていて、「大学ノートをお買いの方は制服制帽でお出で下さい」とあるそうです。こんな風景は私にとっても未知です。「美しき青春」は神田の方を調べます。(何んで早く調べないんだろう、と思っていらっしゃるでしょうね、いやんなっちゃうなあ、とペンさんの歎息)本当にさあ、と言いながらペンさんはさかんにアゴをつまみます。寿江子は今鹿沢にいます。浅間の景色は美しいそうですが、この間鬼気が迫るような手紙を寄越して、私は吃驚して小包をこしらえてちょいちょいしたものを送りました。晩年の母の厭世的な、人の善意をそのままに受けられない心理が、寿江子に現われていて、体の悪さが推察されます。困ったものですが、まあ、あちらにタンノウするだけいて、少しは恢復してもらうしかありません。インシュリンもないのだし。ああいう病気は本当に
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