そちらのバラやカーネーションもこんな光線のなかで、やはり新しく眺められましょう。きょうの雪は私にとって二重三重のよろこばしさです。あなたも皮膚のしっとりした快さでしょう? 本当によかったこと。この雪に向って歓迎の窓をあけたのは発送電の親方のみではありません。では又。お大切に、風邪ひかずを願って居ります。

 二月七日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕

 二月七日  第十二信
 お手紙をありがとう。きょうの雪もゆたかだけれども、私の方も珍しくたっぷりです。
 きのうね、小説をかく女のひとが来ていて、そのひとは珍しく来たひとなので話していたら、二月一日づけのお手紙が来ました。多賀ちゃんがだまって例のチャブ台の上においたので、私はチラリとそれを目に入れて、どうしたって手を出さずにはいられやしない、黙って封を切ったら詩の話が書いてあるのですもの。どうして話しの合間によめるでしょう。上の空になって、それでも相手しながら、手紙の上へ手をおいて、話しました。
 多賀ちゃんとの暮しだと、あなたも御一家息災というユーモアをお洩しになるし、こちらで笑う気持も自然ね。面白いものだと感じます。
 蜜
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