。多賀ちゃんも「ああ楽しみ」と云っているが。
 国府津、ホラあの式で又フロなしですから(水もないのよ今は)それを考えると渋ります。鵠沼のあずまやがつぶれたのでいやね。さもなければあすこへ一晩泊ったのに。その娘さんは私を先生と手紙へかくひとですから、そこの部屋へは泊れないの。その頃まで大車輪でね、そして二日ほど息ぬきして、そして、又はじめます。私多賀ちゃんとあっちこっち歩くのすきです、寿江子みたいに気が重くないし、ひとを心持の上でひきまわさないから。折角風邪ひかずにいらっしゃるのですから猶々お大切に。もう二日で寒はあけます、余寒が却ってきびしいから、お大切にね。

 二月三日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕

 二月三日  第十一信
 今朝はこんな大きい字で雪のおよろこびをかきます。本当によい雪よ、よい雪よ、ですね。何と息も体の工合も楽々となりましたろう。余りかっと眩ゆくないのも休まる心持です。
 ゆうべ御飯たべて多賀ちゃんが台所のガラスをあけたら「あら雪じゃ」というの。「ホウ雪?」と出て見たら竹垣の上に柔かく三四分もう積っていて。「いいね、いいね」と云って床に入りました。よく
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