して、てっちゃんとS夫妻もつらなりました。互に何とか彼とか接触が多いので、いつまでもさけ合わせていても不便なばかりだから一つこの機会ということが云われたので。食卓で自己紹介して(みんなが)一般的に知り合いとなったわけでした。大勢の中でしたから、知らない人もあって(何人も)万事自然でよかったと思います。これは初めてのことでしたから改めて一寸。
 そしたらきのう、てっちゃんが急いで来たから何かと思ったら勤め口がありそうなのですって。産業組合か何かの仕事で地味なもの。月給六、七十円の由。どうしようかと、私に相談に来てくれたというわけです。「ほかに相談するひともないもの、宮本しか」とポーと赤くなっている。「結構でしょう? つとめて見たらいいと思う」と申しました。一度もつとめ人の生活をしないで暮せるというような生活は今の世の中では例外です。いきなり食える食えないのことではなくて、やはりてっちゃんが電話一つかけられないとそれで通っている生活なんて、大ぼっちゃんで変です。いきなりいやにサラリーマンになってはやり切れないでしょうから、そんなところが小手しらべに大いによいでしょうと申しました。あなただっ
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