もお大切に、というしかない次第です。
 私の病気は大体直って、或は直して、ずっと平常です。二十七日につるさんの本のおよろこびをやりました。ごく内輪な顔ぶれでしたが、なかなか呑気《のんき》で久しぶりに愉快だったし、つるさん夫妻もうれしかったようで、肝入役は一安心です。五時半と云うきめだったのに六時半になっても来ず。「きょうは手ぶらで来ていいの知っているのだから、変だ」「妙だ」「何散髪しているのサ」「そうだろうがね」というようなことで七時半まで待って、仕方なく食事にかかろうというときは全く愁眉をよせました。私の気のもみかたをお察し下さい。つとめがえりでおなかがペコペコの連中なのですもの。
 いよいよあきらめて食べるものを運ばせたら、そこへ、ヤアとひょこひょこやって来て! 二十八日(きのう)お仲人をやるのにどうしても金がいるし、髪はきらなくてはならないし、それでおそくなったのですって。電話のない国ではあるまいし。ああよかったよかった、とやっとたべはじめて十時までそこにいて、かえりました。稲ちゃんが、その場へ人にたのんでかりた紋つきと袴とを入れた大きい箱をもって。
 この日には、つるさんが通知
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