のれません。どんなに輪がへって、脳天までビリビリしても市電が安心とは。
こんどいつか気分のましなとき、又お手紙を待っています。お話して、と子供がねだる心持は、こうして考えてみるとなかなか面白いと思います。子供がお話、といってゆく相手との心のつながりが。子供はよく申しますね、長い長いお話して、と。ねえ。
一月二十九日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕
一月二十九日 第九信
きょうの風のひどさ! 二階の南の空は正に黄塵万丈です、ガラス戸をあけるとすぐ目の中が妙になります。一天かき曇っています。こんなに干天で吹くのだから。火事がこわいこと。
お体の工合いかがかと思います。しきりにそう思っています、熱が落付きませんか? 風邪をおひきになりましたか? いけないわねえ、そう思っている次第です。何しろこういう旱天は体に実にわるくて、丈夫なものもすこしずつ異常です、太陽の黒点がすっかりこっち(地球へ)向いているからなのですってね。もうそろそろそれが移動している由です。来月の雨がそこで希望をもって待たれるのでしょう。
何だか様子が分らないので大分気になりますが、こちらからは呉々
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