、1−2−22]健全の価値を知ってそのためにつくし骨を惜しむまいとするところにあると、そう見て下さることで、一層うれしさがリアルです。バックの批評はちがった対象で、作家の人生的難航をかたっていますね。その具体的なものにふれることこそ生きた批評であると云える意味で。自分に対していい批評家であれたら、作家はどんなに育つ力をつよくもつことになるでしょう。作家は従来いつもガンコに主観的です。昔式の作家は皆そうね。その範囲で完成している。そういう主観性と対置されるものはいつも世俗的なかしこさで、藤村のように、こういう時代になるとせっせと子供のよみものを書こうというようなことになり、それを秋声が、ああいう人はいいと歎息してながめることにもなります。藤村の童話は、チャンバラよりは、それはよいでしょう。でもね。秋声がそう歎く歎きにはともかく現代の文学の歎きがこもって居ります。藤村がそういうところへ流れ出してゆくことには、やはり只よりましだ、結構だと云えぬ、すかんところがあるわけです。面白いわねえ。
 十二日のお手紙、改った気持になり、同時に極めて謙遜な心になって、頂きます。自分とすれば一生懸命だおれを
前へ 次へ
全590ページ中430ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング