たこの深みのある、つやのある、みのりこそ、収穫のほめ歌でなくて何でしょう。この収穫は現実のもので、まぎれもないもので、そこにやさしいよろこびの諧調があります。私は未到のものの故に猶若々しく猶その成熟をいつくしむ自分たちを感じます。自分たちがもたないものについて、そのもたない意味を十分に知っていることから、持たない貧相さなど身につけず、却って益※[#二の字点、1−2−22]ひろく瑞々しいマターナルなものに成熟することは、何と面白い愉《たの》しいことでしょう。私たちが愈※[#二の字点、1−2−22]よく生きて、一人二人のもたぬものを、数千万の世代として持つようにしてゆくことは、決して根拠のない空想ではないわ。極めてリアルなことだわ。生む力が精神にもあるということは、普通何でもなく考えられているより意味のあることです。
 バックの「この心の誇り」は鶴見の娘が訳して、しかも抄訳で、日本の読者に分りよくするためと云って、自分の感想を入れたというおそろしいしろものです。いかにも親父の娘らしいでしょう? ですからこの本は、よむに苦しいような本よ。云ってみれば、文字の間にチラチラ、チラチラする作品をさ
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