の。傾きかかるサスペンスのなかで。現実の形であらわれたかどうかは、勿論わからないことです。けれども雄壮に滔々とおちかかる滝の水のしぶきを体に浴びるように感じながらじっと見ている滝壺の底には、そういう身震いするように生新なものさえあったのは現実です。これはあなたに大変意外? そうではないでしょう? そしてこういうことは何か極めて人間生活の優しい優しい深奥にふれたことであって、一生のうちにそう度々は語らないということもおわかりになるでしょう? 喋ることではないわ。感じ合うことだわ、そうね。こういう二人の心をうたった詩はないでしょうか。年ごとにわれらの詩集は単純から複雑へすすみ、なお清純な愛と生命の属性である簡素は失われない。真の抒情詩の美はここにあると思います。
あの本の題は、きょうおはなししたとおりのを入れて、ゆとりと確りさのあるいい題ね。明治のごく初めの婦人作家から入って来るのですからやはり近代日本がついてようございます。きょうは『明日への精神』のための短い前がきをかきます。それから『文芸』の切りぬきを整理し、筆を入れてまとめてしまいます。〔中略〕
『文芸』といえば、雑誌の統制で文学
前へ
次へ
全590ページ中374ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング