かったところだけは買って下さるでしょう。その濤のしぶきの間に益※[#二の字点、1−2−22]陰翳こまやかに黒くはっきりと耀いている二つの眼を見失わなかったということは。そしてその正気の美しい眼も、正気のままにやはり同じ濤の頂に運ばれたことは、思えば思うほど忘れることが出来ない。そういう形で溢れる豊かさ、爽やかな生活力そのもののような戦ぎ。
 買いもののことを仰云ったりしたとき、そういう無垢な美しさそのいとしさに私はうち倒されるようでした。あのとき出した私の声のなかには聴えない絶叫がこもっていたようなものです。
 このお手紙のなかには本の名のことが云われていて、本は僕等の云々とかかれています。この前の手紙にちょっと私が云っていたこと、自分の心と肉体の奥でめざまされるものといっていたこと、それはあなたが本について云っていらっしゃるこのところへ真直つながるものでした。私たちは今日までの生活のうちでいろいろなものを互に与え合って、あたしはあなたにあげられるいろんなものをみなあげているけれど、それでもまだ一つはのこっていることをはっきり感じたの。私たちにもっていいものがまだ一つはあることを感じた
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