かに自分たちであって今の自分たちではない、自分たちの姿を見る白昼の街は独特の趣でした。
 誰かが冗談のように電車代だと云って十四銭くれて、私も笑いながら「これ上げるわ」と十銭だまを掌へあげて、まるでさっさと「じゃさよなら」と別れました。でもどうして、まるでさっさと別れたことを、こんなにはっきり知っているのでしょう。
 膝の上の例の袋には、冨美子のお土産に三田通の青柳で買ったもなかが入っています。省線のとなりにかけた女の子が、ぐるりとエビスをまわるものだから「この電車新宿へ行きますかしら」と心配そうに訊きます。
 エビスのよこのビール会社の空地にビンの丘があって、西日にキラリと光りました。ああ、こんなにあっても足りないのかな、と感心したりして。この頃はソースにしろカルピスにしろ、ビールはもちろん、ビンなしでは買えませんから。
 体じゅうに暑さと何かが射しとおしたようなくたびれ工合でかえりました。冨美子はやっぱりくたびれたと見えて、心地よさそうにひる寝しています。冨美子は白アンがきらいだそうです。それからあっちでは枝豆だのどじょうたべないのね。枝豆やどじょうを、人間のたべない下等なもののよ
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