ことを習ってね。十一月でしょう? そしたら年の暮は野原でということがせいぜいでしょうから。こちらの生活に入りこんで見ていて多賀ちゃんには随分いろいろのことがわかったようです。私が田舎で暮すのは不便ということの意味もわかったようです、ただ水道、ガスの問題ではなく。
 四日のはまだですって? もう、お正月用封筒の手紙はついているわけですね。でも、お正月になってかいたのはまだ? 寄植でぼつぼつ咲いているのは何? 福寿草でしょうか、梅はないでしょう?
 梅と云えば、今年は一つ楽しみが出来ました。それはね、あのエハガキをお目にかけた六義園ね、あすこの梅見に出かけようと思って。私の好きな好きな紅梅も、一本ぐらいはどこかにありそうで。いつも桜や桃を見たいと思うのですが、そんな場所へわざわざ出かけてゆく折がなくて。六義園なら何のことはないし。
 詩の話も愛読して下すってありがとう。なかなか味いつきぬ趣がありますでしょう。お互に一つ本をよんでいるわけですが、やはり又それについての話も伺いたいのは面白い心持ね。話しかたというものに独特な味いがあります、それからそれを話す様子にも。その情景にも。そしてね、こ
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