下げ終わり]

 六月九日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 山口県島田より(封書)〕

 六月九日  島田からの第二信
 さて、又つづきを。
 島田宛の三日づけのお手紙ありがとう、案外に早く五日ごろ頂きました。
 あなたが達ちゃん宛におかきになった速達を、着いたらすぐ読ませて頂きました。本当に懇ろにいろいろおっしゃってあり、達ちゃんも様々に考えましたろう。夫妻ということについてあのひとはいろいろ、あちらにいる間も考えて来たようです。どういうことが夫婦として最大の不幸と不安であるかということも沁々とわかってかえったらしい風です。周囲で、その不安が非常に語られて居り、現実のこととしても多くあったらしく。
 きっとちゃんとやってゆくでしょう、ちゃんとしたそして十分愛らしい娘さんですから。お酒のことだって、本当よ。でもあなた迄それを仰云るのは、きっと多賀ちゃんお前が喋ったからだろうって、お母さんお叱りになった由。面白いわねえ、私たちには何とどっさりのことがかくされて体裁をつくろわれて在ることでしょう、そのこと考えると、可笑《おか》しいやら妙なやら。健康のこと、結婚話がきまってから証明書のようなものを貰っ
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