きょうあたりはきっとお母さん何となしおねむいでしょう、さぞつかれが出たでしょう、何しろ話がきまってから十二日間というスピード婚礼ですから。お嫁さんはもう家へ来たひとという心持でいることがよくわかります。決してどうかしらとは思っていないわ。お里のお母さんには、私たちのお土産としていいパナマのハンドバッグをおくりました。
 お嫁さんにその兄夫婦からおくりものをするというようなことは例のないことなのですって。ですから大変およろこびです、かいぞえの髪結さんは、これ迄何百のお嫁さんをお世話したが云々と、盛《さかん》にここの花嫁の幸運を讚えて居りました。二人とも互が気に入っているらしいから何よりです。お里がえりに出かけるとき、達ちゃんのお仕度がかりは私でね、いいネクタイもって行ってやって、林町の銀のバックルとともに大いに光彩を添えました。コードバンの靴にスフ入りの背広で、万年筆はチョッキの胸ポケットへさすものと初めて会得して、颯爽《さっそう》と出発いたしました。
 この分はこれで終り、つづけてもう一つかきます。

[#ここから2字下げ]
[自注2]組合――隣組のような町内の組合。
[#ここで字
前へ 次へ
全590ページ中236ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング