たそうです、お母さんのお話。見たところも日やけ酒やけしているが、達ちゃんごく丈夫そうですからいいでしょう。
 昨夜は富ちゃんとすっかり話してね。ここの家へ来て座敷へ通ったら紫檀の卓の上に、まるで七八十歳の爺さんでもいじりそうな、ろくでもない小さい茶道具がずらりと並べてあってね、私は何とも云えず物哀れを感じました。だって、昼間は土まびれで火薬だ土方だと、巻ゲートルで働いていて、うちへかえれば母と小さい妹とだけで、そしてこんな古道具屋のまねみたいなことしているのかと思ったら本当に哀れになってしまった。富ちゃんの気持もずっと二半でいたらしいのです、この頃は。
 でも、この家の人たちの気分というものもなかなか一つあります。何というのかしら、小父さんがずっとああいう生活で、まともな道を日々ちゃんちゃんと踏んで生活して来ていないから、こういうことに対する一同の態度も、どこやら自主的にテキパキしないで、一つの力が常に家庭に欠けている。モティーブのはっきりしない日々なのね。だから小母さんなんか富ちゃんに対して、ハラハラハラハラしながら口では二言めには、きもやき息子と云って、しかも息子にこきつかわれてい
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