うついたところを見ると、私の二十八日夜の分もあなたのところへはきょうかあしたのわけでしょうね。
 きょうはどうかして眼がすこしマクマクします、春のように。
 これからの仕事が終ったら、築地を観てその印象をかきます、芝居も久しぶりです。芝居は大した景気だそうです、一般に。楽《ラク》まで売切れとか。柳瀬さん年賀状をよこし近々箇展ひらくとか。光子さんまだアメリカなのでしょうか。どんなにしてやっているのでしょう、変に腕達者にならなければいいけれど。旦那さんそれでなくても売れる画のこつがわかりすぎている傾き故。
 では、どうぞどうぞお大切に。シャツなしのところへお正月の挨拶を。

 一月九日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕

 一月九日  第四信
 きのうからひどい風ね。凧のうなりがそちらでもきこえましょう? どうしていらっしゃるかしら。寒くなったし。風邪は引いていらっしゃいませんか。本当に本当にたべられたくなったら又玉子になろうかしらと思って居ります。
『文芸』の仕事「ひろい飛沫《しぶき》」を書き終り。次の古典読本のための下拵え中。そして、いつか三笠のためにかいた百十五枚ほどの文学史
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