のことにふれ、いろいろの心にふれたいと思います。
――○――
達ちゃんかえって来て何とうれしいでしょう。きょう、「よくかえって来たね」とおっしゃいましたね。「一九三二年の春」という小説の終りの唯一の小説らしい言葉を突然思いおこしました。昔のひとはこの感情を「よくぞかえりつるものかな」と表現しました。本当によくかえって来ました。いつ頃うちへかえるのでしょうね。お祝に私がゆかない代り、あなたと二人の名で、この間お送りしただけお送りしておきましょう。
久しぶりで随分どっさりいろいろと話しました。私はこの手紙がなるたけ早く着くようにと心から願います。
今夜は枕の下に詩集をおき眠ります。その中からの抜きがきを近いうちお送りいたしましょうね。
五月二日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕
五月二日 第三十信
今頃多賀ちゃんが、あおい着物で、そちらで喋っている頃でしょうか、それともぼんやりこしかけてラウドスピーカアをきいている時分かしら。
私は今『文芸』の校正が終りました。先月おくれた「転轍」を今日にまわしたのです。ゲラの紙が全く粗末なものだから字がしみて本当にきた
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