らないものではありますけれど私一人ではやりきれないわ。そうでしょう?
 そんなこんなが一応片づいて午後四時すぎ。寿江子が来て、悄気《しょげ》て私の膝を枕にしてころがったから頭をなでていてやったら、寿江子のつかれも癒ったようですし、私の気持も又のんきになりました。寿江子は和音《ワオン》の教師が(作曲上のテクニック)みみっちい気持で教えおしみをすると云ってしょげているの。やがて気をとり直して、「マアいいや」というわけ。「自分はこれまでいろいろましな人にばかりふれるときが多かったが、そうやって世間普通の根性の人ともつき合ってみるのもわるくないや」というわけです。ピアノをききにゆくというので、ひとりだけ早く玉子をゆでておかかかいて出かけてゆきました。
 私はそれから今日限りの所得税申告を書き込まねばならず、急いで夕飯すまして、それをやって速達にしてかえって、やっとのうのうとしてこんやはこの手紙だけにいたします。
 随分永らくかきませんでしたね、十九日に書いたぎり何てひどかったのでしょう、でも私は今日は今日はと思っていたのよ、カタンカタンとガラスをあげたりおろしたりして、度々受箱を見ていたのよ、
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