。もし梅を植える庭があれば、私たちは紅梅を一本きっと忘れなかったでしょう。
 連信に対しては、非常に深い関心をもって下すって有難く思い、又そのような深い根づよい関心の底にあるより深甚な愛、人生への愛というものを感動をもってうけとります。我々のこの愛すべき生活の日々に、悠々として而もたゆみない成長を見て行こうとする努力を自身に期待し、又期待されるということは、厳粛なよろこびです。勉学のこと、文学の仕事のこと、そして折にふれて美しさきわまりない詩譚を話すこと。我々のところにある生活の刻々が、最も全的に、充実的に満たされることを希う心持は益※[#二の字点、1−2−22]深められて来ていて、今では、おそらくあなたの胸のそのあたりにそのような深さで滾々《こんこん》と湛えられている思いが、感じとられるばかりです。これは、ああわかったというのとは違うのよ、この感じとられる、という感じは。おわかりになるでしょう? 目をはなせないのと同様に、それからは心をもぎ離せないのです。総括的展望は形式に拘らず正しく導き出されるだろうと云っていらっしゃる点は全くそのとおりです。私は最も真面目な考察で、連信への感想を
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