と程なく来たのですって。寿江子曰ク「よっぽど持ってこうかと思ったけれど、かえっておたのしみの方がいいと思って、どうせ落付かないから」と。ありがとう。大変かたまって届いたのですね。三つもいちどきとは。しかもあの三つは、たっぷりしているものたちだから。「煙突ぶらし奇譚」まで覚えていらしたのは、本当にあの一連りの詩物語が、どんなにまざまざとした詳細を生きているかということですね。これらの其々味い深い小題をもつ詩譚は、一つ一つとあなたのお手紙によって思い出させられ、一層の面白さ、可愛さを増します。
 花もお気に入ってうれしいと思います。バラもそちらで開いて満足です。どんなのが行くか分らないのですもの。開き切らずに蕾のバラが行ったとはしゃれている、そして、次第次第に咲きみちたというのは。
 梅というのは、紅梅であったのが、初めてわかりました。それも好いこと。私は紅梅がすきです、濃い、こっくりした紅色の梅。だが私はもっとおそくしか咲かないものと思っていたので、この間『文芸』へやった日記の原稿にもうすこしで「寒の紅梅」としそうになったが、まだ咲くまいと思ってただの梅にしてしまいました、おしかったこと
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