郎が母さんの膝へ栗鼠《りす》のようによじのぼって丸くなって眠ってしまい、その始末をしてからさて、帖面、さてファイルブック、さて受とりともち出して財政審議会。寿江子はこれまであっちへまかせていたのですが、一定額以上兄さんに立て替えをさせ、いくら送れ、というようなことを云い、つかいすぎるというので、あっちでは御機嫌よくないのですし、寿は、寿で、自分のものを自分が使うのに云々というところがあって、必要以上の気持のぶつかりを生じているので、今度はすっかり立ち合って、寿江の使うのはいくら、兄へかえすべきのはいくら等々すっかりやったわけです。寿江子は一番生活能力がないというわけで、父が配慮してやってあったのです。
皆それでもきげんよく協議会を終了。それからお茶をのんで車でかえったのは、お約束の十時をすでにずっと越していた刻限です。昨晩は本当にいい月夜で、遠い家々の赤い灯。建てかけの家の屋根の木片《こば》ぶきだけのところが霜でもおいたように白く月光にぬれ光っていて、目にのこる夜景でした。
かえって、茶の間に入ったら私の場所にお手紙がおいてある。おや、御褒美があった! と云ったら、私が巣鴨へ出たあ
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