変赤坊を生みたく感じました。面白いものね、この間割合ひどい病気して、そのために感覚的にそういう感じがわかるようになって来て、そのアッペタイトのようなものはああ仕事したいという欲望に結びついて、何か活気ある情感を漲らします。感情や感覚の成長、感性の精神力への融合の多様さや豊富さ。私たちの精神がつよい生命力をもっていて、足りなさの感じからでなく、溢れようとするものの側から、一層のゆたかさとして、私がそういう感じをも体得するようになり、女としてたっぷりさを増して来ているということは、何と微妙でしょう。おかれている事情の裡で、なおこのように充ち満ち得るということ。これは私たちの生活の独自な収穫だと思います。私という琴に更に一筋の絃がふえたような工合。その手ざわりと音色とはいかがですか。
 六日の月曜日に。どうか風邪をお大事に。きょうあたりから又ひとしきり寒さが立ちかえるかもしれませんね、

 二月四日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕

 二月四日  第十二信
 きのうは、林町へ出かけるついでに、大塚病院の原さんを見舞って、神田の本やへよるつもりでそろそろ仕度しかけていたところへ電報で
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