。長篇の或書かたとして研究的によんで居ります。ノーベル賞をとったのは、どのようなところの評価であるか全部よまないうちはわからないけれども、着実で同時に動的な構成、周密な立体的描写法など、ジイドの「贋金つくり」などのまがいもの的頭でっち上げ風なのとちがい、リアリスティックな筆致においても、一朝一夕のはんぱ仕事ではないことを感じます。全部で十巻ある予定です。一九一四年夏というのが最後の三冊を占めるのですがどこまで訳出し得るでしょうか。様々の点で勉強になる小説です。
 さて、十三日には何を下さるのでしょう。きょうユリに、何が欲しいかいとおききになったのね。どういう言葉で答え得るでしょう。
 三日。
 きょうは曇って又寒そうな日になりました。
 きょうは寿江子の財政整理のために林町へ行ってやります。兄妹は、そういうことをこれまでさし向いでやって、両方世の中知らず、主観的で感情的にばかりなっていたから。財政上の手腕は私は御存知のとおり皆無に等しいが、立てるべきもの、二次的なものとの差別のわかるところで、マア何かの足しになるのです。
 原さんが赤ちゃんを生んだの(で、)というより生んだのを見て、大
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