断、行動、それだけがあって、ああ私はこんなに心を傾けている云々、という、そういう自覚みたいなもの、枠みたいなものが総ざらいの間に段々まわりから落ちてしまっている、そういう感じの違いかた。感じとしては非常に直接だから、きっとおわかりになるわね。この気持の裡には、よろこびがあるのよ。
午後三時ごろ速達でうつしものが届きました。して見るとお金の請求がそちらへ行ったのかしら。
きょうは、林町の方へひさを手つだいにやったので夕飯は寿江子と二人。林町、家が古くなって土台があやしくなって来たのを機会に、玄関を入って西洋間へ入るところをすっかり直して明るいホールのようにし、食堂の床は板にして椅子にすることにし、土蔵や洗面所の方もすっかり手入れしました。まだ半分で、明日二階で式をするためにはいろいろ一先ず形をつけなければならないので人手不足の由。私が十四五歳の頃からそこにいて初めての小説やその次の作品や丁度あの『一つの芽生』という本に入っている位までの作品をかいた茶室風の部屋も、これで未練なく消えてしまったわけです。寿江子はちょいちょいフランスの詩などを読んで、それに曲をかいています。二階から夜下へ
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